干し椎茸の戻し汁の使い方。使う量から最高のお出汁の取り方まで解説します!

2021年03月23日

こんにちは!店長の山根です。

さて皆さん、干しシイタケを戻した時に出てくる琥珀色の戻し汁、どうされていますか??
料理好きな方は一度は「戻し汁は捨てずに使うべし!」ということを聞いたことがあるかと思います。

だけど、どうやって使えばよいかイマイチよく分からないという方も多いのではないでしょうか。本日はそんな方のために、干しシイタケの戻し汁の使い方をシイタケ屋目線でお伝えしたいと思います!

<目次>————————————————————

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1.戻し汁は出汁として使うべし!上手な出汁の取り方。

結論から申し上げますと、干ししいたけの戻し汁は「出汁(だし)」として使います。ズバリ上手に出汁をとる方法は以下の通りです。

  1. 使いたいしいたけの戻し汁を鍋に入れ、強火にかけます。
  2. 温度が上がってきて鍋の底から泡が上がってきたら、弱火にします。
  3. そのまま10分ほど沸騰させないように火をかけながら保ちます。お急ぎの場合でも5分程度は温度を保ってくださいね。

もちろん、火にかける前の戻し汁を調理の際にそのまま入れてしまっても良いのですが、その際のポイントも上記の通りですので、作っている料理と相談しながら上手に出汁を取ってくださいね。ポイントは、3が終わるまでは沸騰させないこと。これは大事な旨味成分を作るのに必要なことなので、後ほど理由を解説します。

 

2.どれくらいの戻し汁を使えばよいの?

だしの取り方が分かったところで、実際にはどれくらいの量を料理に使えばよいのでしょうか。

これは戻し汁の濃さ作っている料理によって違います。当サイトでは、戻したい干しシイタケの重量の約20倍量の水で戻すことを推奨しています。これは、料理に戻し汁を加える際に薄まっても出汁の旨味を感じていただけるくらいの濃さを目安にしているからです。

したがって、レシピ本やレシピサイトにある「水」を戻し汁で代用するとか、最後に味見をしてみた際「少ししまりが無いな」と感じたときに加えるとかでご利用いただけます。もちろん「だし汁」と書いてあるものについては全量戻し汁としてもらって結構です。

目安として、煮物や筑前煮、カレーなど味を素材に染みこませたい料理には多めに、スープなど、食材の持つ味や香りを引き立たせたい場合は控えめにしていただくのが良いと思います。まずはいろんな料理に使っていただき、お好みの量を見つけてみてください。

 

3.旨味の宝庫な椎茸の戻し汁

では、戻し汁はなぜダシになるのでしょうか。

これは、戻し汁に含まれている成分が関係しています。干しシイタケの戻し汁に含まれている「グアニル酸」「グルタミン酸」、そして一部の遊離アミノ酸などの成分は「旨味成分」と呼ばれ、料理の味をより感じやすくしたり、食欲をそそったりといった役割を果たす名脇役です。上手に使えば塩分などの使用量を抑えることもできるんです。

旨味についてはこの記事にも詳しいので、興味のある方はご覧になってくださいね。

低温乾燥でとったお出汁

 

4.干しシイタケの旨味ができる仕組み

さて、上記したように、干しシイタケのだしを上手に引くには加熱が必要ですが、沸騰しすぎてもいけないというポイントがありました。これにも旨味成分が大きく関係しています。

干しシイタケの旨味成分の内、特に特徴的なのが「グアニル酸」です。この成分を含む食材は非常に限られており、そのほとんどがきのこ類なのですが、実は干しシイタケの含有量は他の食材と比べても数倍から数十倍も高く、群を抜いているのです。したがって、干しシイタケの良さを最大限に引き出すには、このグアニル酸をしっかり引き出してあげることが大事なんですね。

ですが、このグアニル酸、干しシイタケを戻した段階の戻し汁にはほとんど含まれていません

ここから少しややこしい話になるのですが、お付き合いくださいませ。

実はこの時点ではグアニル酸になる前の物質(前駆物質)であるリボ核酸が干しシイタケから溶け出しています。

で、リボ核酸は同じく戻し汁中に溶けだしているリボ核酸分解酵素と呼ばれる酵素によって分解されてグアニル酸に変化するのですが、この酵素が一番よく働くのが60~70℃という温度帯なのです。なお、リボ核酸は水温が5℃くらいの時が一番よく抽出されることが分かっています。

したがって、干しシイタケを戻す時は5℃くらいの冷水でリボ核酸を最大限に抽出し、リボ核酸分解酵素が良く働く高温に加熱することで、より多くのグアニル酸を引き出そう、というわけなんです。

ですが、これだけだと「沸騰直前、かつ沸騰させない」理由がわかりませんよね。また、最初の加熱は強火であることの理由もよく分かりません。

実は、同じ戻し汁の中には、せっかく生成したグアニル酸を分解する働きのある「ヌクレオチド分解酵素」という酵素も含まれています。この酵素が活発に働くのは40~60℃。そう、リボ核酸分解酵素が働きやすい温度帯の少しだけ下なんです。

ということは、例えば60℃くらいまで加熱してグアニル酸がたくさん生成されたとしても、その温度帯では生成されたグアニル酸がどんどん分解されてしまい、あまり意味がなくなってしまうんですね。

なので、グアニル酸を作るリボ核酸分解酵素がそれなりに働き、分解してしまうヌクレオチド分解酵素があまり働かない沸騰直前(80℃くらい)まで、強火で一気に上げてしまうのが望ましいというわけです。

ちなみに、沸騰させてしまうとリボ核酸分解酵素が活動できなくなってしまい、他の旨味成分も壊れるものが出てくるので、沸騰を避けるようにするというわけです。

↓ わかりやすく(?)図解するとこんな感じになります。

グアニル酸生成の仕組み図解

5.上手なしいたけの戻し汁の作り方

上述したような理由から、干ししいたけの戻し汁は5℃くらいの冷水戻しで作るのが一番おススメです。詳しい作り方や、それを応用した便利なストック方法は下記の記事をご参照くださいませ。
・旨味を引き出す!干ししいたけの美味しい戻し方
・だしソムリエのシイタケ屋が教える、初心者でも簡単、絶品和風だしの作り方

なお、当サイトではグアニル酸を含む旨味成分が出やすい干しシイタケとして「低温乾燥しいたけ」を開発し、販売しております。ご興味があればお試しくださいね。

6.便利な戻し汁の保管方法について

様々な料理に使える椎茸の戻し汁ですが、便利な保管方法としては冷凍があります。
やり方は簡単。余った戻し汁を製氷皿に入れて冷凍し、凍ったらジッパー付きの袋などに入れて冷凍保管するだけ。

料理の際はできた氷を入れて加熱調理をすれば、簡単に旨味を加えることができますよ。

 

7.最後に

いかがでしたでしょうか。今回はいろんな物質名が出てきて少しややこしかったですが、ポイントは

  • 干しシイタケの戻し汁は出汁としてあらゆる料理に使うべし
  • 良い出汁を取るために戻す温度と加熱温度にこだわるべし

の2点となります。

皆様もポイントを押さえて日々の料理を手軽にレベルアップしてみましょう!

それでは!